飲食店や美容院などを開業するにあたり、賃貸テナントを探すと「居抜き物件」や「スケルトン物件」と記載されている物件情報をよく見かけませんか? 物件を選ぶときに、どちらを選べばいいのかわからない方もいるのではないでしょうか? 今回は、テナント選びの際に重要なポイントとなる「居抜き物件」や「スケルトン物件」の、違いやメリット・デメリットを解説します!
「居抜き物件」の特徴
店舗や事務所など前テナントが利用していた造作・設備・什器等がついたままの物件のことです。
居抜き物件と言っても様々な状態があり、テーブル、椅子、厨房は撤去済になっていても、壁、床、天井、トイレ、エアコンは残っている状態も含まれます。 居抜きの引き渡し状態は特に決まりがないので、売主が希望する状態を引き継ぐことになります。 居抜き料が有料の「有償物件」と無料の「無償物件」が存在します。
物件の契約費用(賃貸借契約)とは別に有償の場合は居抜き料が掛かり、居抜き料の設定は借主の自由設定になりますので、物件により異なります。居抜き募集を行う業種は多岐にわたり、飲食店・美容室・整骨院・エステ・工場・オフィスなど現借主の承諾を得られれば様々な業種の物件が募集されることになります。
「居抜き物件」がおすすめの人
・内装に強いこだわりがない方 ・オープンを急いでいる方 ・初期費用を少しでも抑えたい方 ・初めて開業する方 ・比較的、前店舗と業態が近い方
このような方には「居抜き物件」がおすすめです! 居抜き物件についてメリット・デメリットをご紹介していきますので、居抜き物件にするかスケルトン物件にするか、迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
「居抜き物件」のメリット
・出店時コスト削減
既存テナントが使用していた内装や設備をそのまま利用できるため、改装や設備導入へかかる初期投資の減少が期待できます。
・営業開始までの時間短縮
内装や設備などがある程度そろっているため、入居までの工事期間を削減でき、開業までの時間を短縮することができます。
・人気エリアでの募集
人気エリアはすでに高い集客力や交通アクセスの良さなどの利点があります。居抜き物件はこの立地の魅力をそのまま活かすことができるため、ビジネスの成功確率が高まります。
・前テナントのお客様の取り込み
元々飲食店をしていた居抜き物件であれば、前テナントのイメージが残るため、同じような飲食店がオープンした際に「新しい飲食店も見ていこう」というように、近隣住民の取り込みも期待できます。
「居抜き物件」のデメリット
・設備故障のリスク
居抜き物件は前テナントが使用していた設備や内装がそのまま残されていますが、これらの設備が老朽化している場合があります。例えば、冷蔵庫やエアコンなどの主要設備が故障し、新たに購入または修理する必要が生じることがあります。
・譲渡品が不要でも居抜き代は必要
「居抜き物件の条件(可能業種・立地・金銭面)は良いが、中の譲渡品は要らない…」という場合でも希望物件を契約したければ、「居抜き代」を支払う必要がございます。
・再度内装工事が必要な場合がある
譲渡品がこれから始めるビジネスに合わない場合は新しいビジネスに合わせて、一度スケルトンに戻す必要があります。さらに費用と時間が掛かることもございます。
「居抜き物件」を借りる前の注意事項
・譲渡品は中古品であること ・譲渡品リストのチェック ・貸主の承諾を得ているか ・譲渡品の状態確認
居抜き物件を選ぶ場合は上記の注意点を考慮して選択しましょう。
「居抜き物件」は「居抜き料」に決まりがない
基本的に居抜き料には決まりはありませんので、借主の方と話しの折り合いがつけば交渉により価格が下がることは珍しくありません。 逆に人気物件であれば一切交渉ができずに相場よりも高い価格で多数のお申し込みが入ることもあります。予算や条件に合った居抜き物件選びが大事です。
「スケルトン」の特徴
「スケルトン」とは、店舗内の床・壁・天井・内装などが何もない「建物の躯体だけの状態」を指します。簡単に言うと「コンクリートの打ちっぱなしの状態」のことです。
入居時の契約で、退去時はスケルトン状態に戻す物件(原状回復)がほとんどです。つまり、「スケルトン渡しのスケルトン返し」 が基本となります。
退去後に、新たに入居する業種が同じ場合などにおいて、設備をそのまま残す「居抜き物件」で解約を希望したい場合もあると思います。 しかし、スケルトンに戻す条件で契約をしているのであれば当然ながら元に戻さなければいけません。
「スケルトン」がおすすめの人
・内装にこだわりを持っている方 ・移転等で物件に入居するため、厨房機器等は持っている方 ・レイアウトにこだわりを持つ方 ・新品の内装を使用したい方 ・幅広い選択肢から選びたい方 ・外観が綺麗なテナントビルがお好みの方
このような方には「スケルトン」がおすすめです!
「スケルトン」のメリット
・店内の内装やレイアウトを自由に決めることができる
スケルトン物件は基本的に空っぽの状態で提供されるため、ビジネスのコンセプトに合わせて内装やレイアウトを自由に設計することができます。これはブランドイメージの確立や顧客体験の向上に大きく貢献します。
・物件の選択肢が多く探しやすい
スケルトン物件は居抜き物件よりも多く市場に出回っているため、立地や規模、賃料などの条件に合った物件を見つけやすいです。特定のエリアで複数のスケルトン物件を比較することもおすすめです。
・前テナントのイメージを引き継がなくて済む
スケルトンであれば、内装のイメージも一新できるため、前テナントの評判やイメージを気にする必要がありません。
・居抜き状態から内装を変更するよりも安い場合がある
居抜き物件の内装を一度解体して新たに作り直すよりも、まっさらな状態から作り上げるため、取り壊しなどは不要で、最初からスケルトン状態で工事を始める方がコストを抑えられる場合もあります。
「スケルトン」のデメリット
・退去時に原状回復費用が掛かる
居抜き物件は前テナントが使用していた設備や内装がそのまま残されていますが、これらの設備が老朽化しスケルトン物件を退去する際には、契約に基づき原状回復を行う必要があり、その費用が高額になることがあります。特に内装を大幅に改装した場合、その撤去費用がかさみます。
・オープンまで時間がかかる
スケルトン物件は内装や設備が全く整っていないため、開業までに多くの工事と準備が必要です。
・インフラの工事が必要
スケルトン物件では水道、電気、ガスなどの基本的なインフラ設備も整っていない場合が多く、それらの設置工事が必要です。これにより、追加のコストと時間がかかります。
・店舗の周知に時間がかかる
新しいビジネスを始める際、地域の顧客に店舗の存在を認知してもらうためのマーケティング活動が必要です。特に新しいエリアでの開業の場合、顧客の獲得に時間がかかることがあります。
「スケルトン」の注意事項
・原状回復工事はどの範囲まで必要か
退去の場合は原状回復(スケルトン返し)が基本 ですが、借主とオーナーの「原状」認識の違いからトラブルになることが多々あります。 それを防ぐために、入居前に「原状回復範囲」がどこまでなのか 、オーナーと1つ1つ確認しておくことが大切です。また、その原状回復の工事責任が借主側 or オーナー側なのかということも確認しておきましょう。 内容によっては、オーナー側が工事をすべきものもあるため、損をしないように注意が必要です。
・退去までの時間
オフィスや店舗の場合は契約終了までに原状回復を完了させることがほとんどです。 坪数や設備によって変わってきますが、通常2週間~1ヶ月は原状回復工事期間 がかかります。 ということは、退去日から逆算して遅くとも1か月前 には着工している必要があります。大型連休や繁忙期には業者の確保も難しくなるので、遅くとも2ヶ月前までに業者への問い合わせや見積りをしてもらいましょう。